2014年の7月2日。
少し雲って風が強い朝でした。
ディレーラーの調子が悪くて何度か調整しながら彩湖を周回していました。
今思えばそこで出直せばよかったんです。
30キロ程走り、平坦路を走りたくなって彩湖脇の土手に上がりました。
向かい風が強く、それでもアウターギアでひたすら漕いでいました。
左の方に鳥が飛んでいるのが目に入りました。
次の瞬間、風に煽られた鳥が、僕の右顔面に当たりました。
反射的に右にハンドルを切ってしまい、後輪が中に浮き上がりました。
慣性でそのまま前に放り出されアスファルトに叩きつけられて気を失いました。
ジリジリと暑い日差しと、焼けたタイヤの匂いで目が覚めました。
何とか立ち上がりましたが、ウェアの左側は裂け、かなり出血していました。
幸い自転車はチェーンが外れた程度で、そのままゆっくりと駐車場へ戻りました。
しかし左腕の感覚が全くなく、間違いなく折れたと思いました。
全身を強打しており、意識が朦朧とする中、かかりつけの整形外科を受診しましたが、とても手に負える状態ではないと言われ、総合病院へ回されました。
僕の左腕は粉々に砕け、見る影もありませんでした。
その日から日常が一変してしまいました。
仕事も人生も。
全身の傷がひどく、ある程度良くなるまでは腕の手術が出来ない。
起き上がる事も難しく、砕けた骨の痛みに半月耐えました。
その後、骨を再生する手術を受けました。
手術前に、看護師から「またロードバイク乗るんですか?」と聞かれました。
僕は「わかりません。乗らないかも。」と答えた気がします。
その後の半年間は長いリハビリでした。
長期間固定された左腕は細って骨と皮、肘を曲げる事ができず、肩から長い棒をぶら下げている感覚でした。
主治医と作業療法士のお陰で二ヶ月後には仕事復帰、現在は日常生活に支障のないレベルまで回復し、体力は事故前より高まっています。
アクシデントとはいえ大きな怪我をして、家族や仕事に迷惑をかけ反省しましたし、自転車やめようと思いました。
30代になって、自分を変えたくて始めたロード。
思えば以前はがむしゃらにロードに股がって、無計画に走っていました。
初めて彼女が出来て、毎日会いたい感覚に似た、いつも高揚した状態でした。
公道でも凄いスピードで走っていましたし、危ないと思った事がありませんでした。
でも、自転車、特にロードバイクは究極の乗り物です。
時速50キロで落車すると体は粉々になり、全て失う危険性があります。
事故後、またロードバイクに乗っていられる事が本当に奇跡です。
今は常に危険回避出来るよう、安全なスピード、
安全な車間を心がけ、車の迷惑にならないように、クローズドのサイクリングロードでもいつでもブレーキング、停止できる余裕を持つと心に誓いました。
すると自転車は暖かく迎えてくれた気がします。
フレームを味わいながら、タイヤやホイールを感じながら、今まで見えなかった、感じられなかった一体感で背中を押してくれます。
道具なのに、こんなに愛らしく美しい。
春、また風を感じる事ができました。
娘も自転車に興味を持ってくれて、たまに付き合ってくれます。
再来週には二度目の手術で入院します。上手く行けば左腕の違和感も無くなるそう。
しばらく乗れないけど。
夏には軽快にダンシングしているでしょうか。
にほんブログ村
[4回]
PR